「オーデュポンの祈り」 伊坂幸太郎

ちょっとしたことで読み進めるのが遅くなっていたのだが,ようやく読了。
コンビニ強盗に失敗した主人公が気付いたら奇妙な島へ。鎖国が続いたような閉鎖された島には喋る案山子がいて,しかもそいつは予言者だった。
島の人間も喋る案山子に全く驚くことはなく,一種の宗教のように信じきっている。まるでそれが当然であるかのように。島に住む人間もそれぞれ信じられない特徴を持っていて,そんな島の様子に戸惑う主人公の周りで起こったのは殺人事件。また,主人公を逮捕した警察は仙台で執拗に主人公の行方を追い,主人公の元恋人の元を訪れる。
島で起きている殺人事件は非常にあっさりと描かれているため,仙台で主人公を追う警察官の悪意が非常に強く感じられる。このコントラストが絶妙。ラスト3ページの余韻もよい。最も気になった一節を引用

だって,彼らはその後,死んでしまうんですからね。感想なんて聞けませんよ。でも,きっと安心すると思いません?自分が消えてしまうとすれば,それって,誰かに見てもらいたいじゃないですか。俺ならそうですよ。そうでなければ,自分がはじめから消えていたのと勘違いしちゃいますからね。