「世界中が雨だったら」 市川拓司

いま、会いにゆきます」の作者の新刊。3編の短編からなる。
琥珀の中」:主人公は高校生の少年。少年が恋をした同級生はクラスの誰もが憧れる美少女。図書館での会話がきっかけで二人は急速に接近し、体を重ねるようになる。しかし、彼女は義父を殺したという秘密を隠し持っていた。それを知った少年の行動は。。。
「世界中が雨だったら」:いじめに悩む中学生の少年が最後に取った行動は自殺ではあるのだが、その方法は被害者であると同時に加害者足りえる方法であった。死の投票。それが分かったときの少年の家族は。。。
「循環不安」:誤って二人の女性を殺害した青年が自らの夢と称した、「ある女性と結婚して普通の家庭を築く」ことを成就させるため死体遺棄を試みる。その先にあるものは?
全ての物語に一貫したテーマは「歪んだ愛と死」とでも言えばいいのだろうか。「愛し方を間違えた少女」「愛されたいと願う少年」「女性をどう愛すればいいのか分からない青年」。
人間は誰しも評価されたがっている、それは「他人からの干渉を望んでいる」ということになるのだろうけど、でもそれはなぜ?なぜ評価が必要なのだろうか?他人との比較でしか自我を認識できないからか?好評価を得ることによってより多くの報酬を得たいからか?それとも他人からの評価の一つの形として「愛」があるからか?では、その評価が得られない場合は?
「世界中が雨だったら、どこで雨宿りすればいいんだろう?」