「I LOVE YOU」 伊坂幸太郎(他)

6人の男性作家が綴る恋愛短編集。
どの作品もさらっと読めて心地よい。
「透明ポーラーベア」伊坂幸太郎:行方不明の姉に関わったことのある(正確には元恋人)人々と,その弟が偶然(本当に偶然に)水族館で出会う。その偶然に弟は何を思うのか。
この作家はホント多才というか,綺麗な文章も,ゾクっとする文章もこうやってこなしてしまうのか。。。
「魔法のボタン」石田衣良:個人的に最も気に入った作品。恋人と別れた男が20年来の友人の女性に愚痴をこぼす。後はお約束のパターンとなるわけだけど,とにかくさわやかな印象で,また女性のキャラクターも素晴らしい。自分は一体誰の”魔法のボタン”を押したいのかな。
「卒業写真」市川拓司:喫茶店で偶然出会った元同級生(=初恋の人)。ストーリーはこの喫茶店での(おそらく)1時間程度の内容。何年たっても恋愛に対しては誰しも臆病で,進歩がないのかもしれない(笑)
「百瀬,こっちを向いて」中田永一:誰が一番演技をしていたのかな。ちょっと切ない。
「突き抜けろ」中村航:恋愛というよりは大学生の青春モノ?自分の大学生時代を思わずかぶせて,深夜まで男同士飲んだり騒いでいたりした頃を思い出した。
「Sidewalk Talk本多孝好:これだけ”別れ”がテーマ。表現が難しいけれどもすれ違うでも反発するでもなく別れることはある。そのやりきれなさ,切なさの中に,それでも未来の奇跡を信じる光が見える。秀逸。