「解夏」 さだまさし

タイトルの「解夏」を含む4編が詰まった小説集。
解夏」に関しては、原作を読むと、映画はそれなりにうまいことまとめていたなぁと感心する。小説から得られる雰囲気と映像の雰囲気は同じように感じられたし、多少恋愛モノに走りすぎてしまったことは仕方ないと思われる。
秋桜」:外国から来た女性が古い慣習が今も根強い田舎に嫁ぎ、そこで起こるさまざまな出来事を綴った物語。
「水底の村」:ダムに沈んだ村を離れた二いとこの少年と少女が、紆余曲折を経て20年後に再開する。それぞれに環境が変わったが、今も変わらないものは?水に沈んだ故郷の村が全てをリンクさせる。
サクラサク」:痴呆になりつつある父を抱えたサラリーマンの男性と、仕事に没頭しあまつさえ浮気をしていた夫を許せない妻、高校を中退しNEETとなっている息子、今時の典型的な女子高生である娘。痴呆になりつつある父が語る故郷の話は真実か?

全編を通していえることだが、情景が綺麗。あまりにも綺麗過ぎる。人物の心情などは非常に精緻に描かれているが、やはり綺麗。
読みやすいし、量もちょうどよい。何が欠点というところも取り立てて見当たらない。けれどどこか現実味がない(フィクションだから当然ではあるが)。
感じたのは、歌詞に似ているということ。泥臭さがあまりなく、さらりと流れて最後はなんとなく綺麗にまとまる。
う〜〜ん、自分でもよくわからないけど、少なくとも悪くはない。